「ばらの騎士」
2015年 06月 08日
このオペラ、あらすじをざっと見て、年増の高貴な女性の若いつばめが別の若い女性を好きになり、年増の女はそっと身を引く、とかその若いつばめを女性が演じ、女性3人によるラストの三重唱がクライマックス、との事前情報を見て、大丈夫だろうか、面白いんだろうか?と疑問を持っていたのですが、なるほど~、新国立劇場のこのオペラに対する謳い文句にあるように「煌めく音楽が奏でる甘美なノスタルジー。」な舞台でした。見に来ているお客さんは心なしか、いや、かなり男性が多かったです。この世界は男性にとってどう魅力的なんだろう、と考えたのですが、元帥夫人って実は男性にとっては都合よく身を引いてくれるいい女である、ということなんでしょうか。いや、そんな単純なものではないと思うのだけど。男性を女性が演じているし。女性の私から見たら、元帥夫人がすっごく魅力的で、2幕であっさりと浅はかそうな若い女性に惹かれてしまうオクタヴィアンは馬っ鹿じゃないの?と思ってしまったのですが、台本を書いたホフマンスタールが「本当に人間的な魅力をたたえた元帥夫人を彼があっという間に忘れてしまい、十人並みの小娘にすぎないゾフィーと一緒になるところに、この作品のおかしさがある」と述べているそうで、ここはおかしさを楽しまなければならない点なのね、と少しすっきりしました。でもこういう浅はかなところのあるオクタヴィアンとなぜそんな人間性が深い元帥夫人が付き合っていたのかというと、オクタヴィアンの若さと美しさのためであったと思うので、そこは仕方がないところでしょう。というわけで元帥夫人が潔く身を引くというのは当たり前だとは思うけれども、その身分の高さとそれに見合った振る舞い、差配の見事さが美しく、そう演じることが求められるこの舞台においてそのように見事にこの役を演じたアンネ・シュヴァーネヴィルムスさんは素晴らしかった。元帥夫人が登場しない2幕は気が抜けたように感じ、眠気を覚えました。3幕、彼女の登場によって舞台はキュッと引き締まり、というか、彼女の登場部分は音楽も格段に素敵。オックス男爵はこの舞台ではお笑いに徹していたけども、どうなんだろうなあ、と思っていたら、原作者はやはりオックス男爵は魅力ある人物と想定していたようで、そのように演出された舞台も見てみたいものだと思いました。